Kashima Soccer Room

Kashima0299

狂言綺語な世界線

2019年8月10日

8時30分、東京駅から鹿嶋市へ向かうかしま号に乗車する。メインイベントは19時から開催されるJ1リーグの横浜F・マリノス戦、サブイベントは10時からクラブハウスで行われるJ1リーグでメンバー外の選手たちによる練習の見学だ。いつの間にか眠ってしまっており、間もなく水郷潮来に到着するという車内アナウンスで目を覚ます。それから数十分バスに揺られ、宇宙通信センターでバスを降りる。

クラブハウスに到着する。間もなく練習が始まるところだった。怪我で戦列を離れている内田篤人もいる。その内田篤人は練習が終わったあとも有馬幸太郎のシュート練習に付き合い、中村充孝も野次を飛ばしながら有馬幸太郎のシュート練習を見つめている。有馬幸太郎は鈴木優磨がトップに昇格した時と同じ背番号である34番が与えられたアカデミー出身のストライカーだが、まだ出番はない。しかし、天皇杯の次の相手は下部カテゴリーの栃木SCだ。もしかしたらそこで出番があるかも知れない。目の前のグラウンドでは黒崎久志コーチのパスを受けた有馬幸太郎が左足を振り抜き、鋭いシュートがネットに突き刺さった。

今夏、安西幸輝、安部裕葵、そして鈴木優磨が海外のクラブに移籍した。代わりに小泉慶や相馬勇紀を獲得、そして上田綺世の加入前倒しといった補強はあったが、戦力低下は否めない。最も痛いのは鈴木優磨の移籍だろう。しかし、その舎弟の有馬幸太郎が必死にトレーニングを積んでいる。上田綺世も即戦力として活躍できるはずだ。来季からは昨年の全国選手権の主役となった染野唯月くんの加入も内定している。大迫勇也もそろそろ帰ってくるだろう。鹿島なら大丈夫だろう、と自分を言い聞かせる。

19時、横浜F・マリノス戦が始まる。キックオフ即、セルジーニョがゴールを決めてリードを奪う。その後、相手に押し込まれる時間が続くも、右サイドバックとして起用された小泉慶が鹿島サポーターの目の前でデュエルに勝ちまくる。68分、同点に追いつかれる。73分、上田綺世がカシマのピッチに投入される。鹿島加入後、アウェイで2試合に途中出場したが、スケールの大きさは示した。上田綺世の投入によって、スタジアムのボルテージが一段階上がる。77分、三竿健斗が相手の退場を誘発し、数的優位に立つ。81分、相馬勇紀が投入されるなり左サイドで仕掛けまくり、スタジアムのボルテージがもう一段階上がる。

87分、スローインのリスタートからゴール前に緩やかな浮き球が供給された。土居聖真が頭で落とす。上田綺世がいる。バックステップで相手のタイミグを外す。ひとつひとつの動作がスローモーションになって目に飛び込んでくる。右足を振り抜こうとしている。次の瞬間、ボールがネットを揺らし、ゴールを決めた上田綺世のもとにチームメイトが次々と飛び掛かってきた。そんな幸せな光景も見ずに、隣で応援していた知らない中年男性と抱き合いながら新たなエースの得点に熱狂する。

試合終了、鹿島が勝ち点3を獲得した。ヒーローインタビューを終え、場内を一周している上田綺世の名前を叫び続ける。上田綺世は鹿島アントラーズのアカデミーで育ち、ユースチームへの昇格は叶わなかったが、鹿島アントラーズに帰ってきてくれた。鈴木優磨とコンビを組むのも観たかった。きっと相性抜群で、他のサポーターから恐れられる歴代最高の2トップになったはずだが、それは自分勝手で非現実的な願いだ。鈴木優磨はベルギーで自身の野望のため、鹿島アントラーズの代表として頑張ってきて欲しい。

上田綺世もいつの日か、海外に旅立つ日が来るだろう。それくらいのポテンシャルがある選手だ。近年はJリーグで活躍出来なくても海外移籍を行うケースが増えてきたが、上田綺世には日本で圧倒的な存在になって海外へ行って欲しい。鹿島でタイトルを獲得し、Jリーグの得点王として、上田綺世が移籍したら鹿島は終わりだ、なんて言われるくらいの活躍を期待をしている。