Kashima Soccer Room

Momosaka

22J1-1 vsG大阪レビュー「続き言うまで」

吹田スタジアムで初めて開催される公式戦。愛するクラブの新たなホームスタジアムでの初陣は絶対に勝たなければいけない。永遠に記憶に残るから。汚い手法でチームを勝たせることだけが上手いだけのサイコパスであり、画面に映る度に不快な気持ちになる、まさに鹿島というクラブの象徴、小笠原満男に初ゴールを許した場合には、一生このスタジアムに入れなくてもいいからペットボトルでも投げ込んでやろう、なんてサポーターが思ってそうなガンバ大阪との一戦で2016年のリーグ戦は幕を開けた。

ただ、鹿島アントラーズにとっても、この吹田スタジアムでのリーグ開幕戦は重要な一戦だ。今季からクラブ史上初めて欧州出身の指揮官を招聘したが、その新監督は未だ入国できていない。いつ日本に入ってこれるかも分からない状況だが、少しでも良い位置でレネヴァイラーを迎える為、開幕戦を久しぶりの白星を飾り、スタートダッシュに成功させたい。2016年、開幕戦でガンバ大阪を下し、吹田スタジアムでのCWCの準決勝や天皇杯の決勝戦を経験した選手は少なくなった。吹田スタジアムを相性が良いと感じている選手は少ないかもしれない。それでも、このスタジアムの素晴らしさを知っているサポーターがついている。声も出せない状況で二階席に押し込められたが、手拍子でクラブを後押しする。

吹田スタジアムにキックオフの笛が鳴り響き、新たなシーズンの開幕戦が始まった。何年か数えることも嫌になるほどリーグタイトルから遠ざかっている鹿島だが、序盤からハイプレスで相手に自由を許さず、チャンスを作り出していく。時折、あわやピンチというシーンを作られるも、昌子源が相手の攻撃を弾き返す。土居聖真も負けじと中盤で攻撃の起点となる。ピッチの中央付近でG大阪の選手がボールを持った。すぐさま、鹿島の40番が襲い掛かる。

小笠原満男が素早い寄せでボールを奪い、そのボールが前線まで繋がると、右サイドからの折り返しに反応した赤JIS+7975秀平がネットを揺らす。鹿島の18番が吹田スタジアムでの初ゴールを奪った。しかし、副審がフラッグを上げていた。吹田スタジアムの大型掲示板にリプレイが映し出せれる。誤審だったとしても、判定が覆るわけないが、その映像を確認する。確かに、わずかにオフサイドだったようだ。得点は認められなかったもの、攻撃の形を作り出した鹿島はその後も多くのチャンスを迎える。遠藤康が強烈なミドルシュートを放つ。中村充孝が左サイド深い位置まで侵入する。しかし、シュートは大きく外れ、ゴール裏のガンバ大阪サポーターが嬉しそうに両手をブンブン振っている。

相手ボールで試合が再開する。最前線のターゲットであるパトリックに向かってロングボールが蹴り込まれるが、パトリックが可哀相なくらい雑なボールだった。そのボールをキムミンテが頭でディエゴ ピトゥカに繋ぐ。ピトゥカが浮き球を収めて前を向くと、鹿島の18番が動き出している。そこに絶品のスルーパスが届けられ、強烈なシュートがネットに突き刺さる。オフサイドフラッグは上がらない。VARによるゴールチェックが入るが、上田綺世の動き出しで判定が覆るわけがない。ゴール裏のガンバ大阪サポーターが静まり返る。しかし、まだ若いチームだ。先制からわずか5分後、同点ゴールを献上した。

タイスコアで迎えたJIS30=72分、歓喜の瞬間がやってくる。右サイドでのスローインからリスタート。西大伍、金崎夢生が細かいパスを繋ぐ。相手に奪われるが、上田綺世、荒木遼太郎らとの連動したプレスで土居聖真がボールを奪い返す。カイオが右サイドから緩やかなクロスを上げる。ガンバ大阪の選手が急いでカバーに入るが、間に合わない。鈴木優磨がゴールを奪った。絶望に包まれる吹田スタジアムの一角で歓喜が爆発し、鈴木優磨がエンブレムにキスしながらベンチに向かって走り出す。金崎夢生が頭を抱えながら笑い、岩政大樹が拳を突き上げた。

1点のリードを持ったまま、後半のアディショナルタイムに突入し、今季から加入した三竿健斗の出番がやってきた。将来有望ながら、J1リーグでの試合経験はなく、未知数で怖い部分もある。獲得が決まった際、動画配信サイトでプレー集を見たが、攻撃的な選手ではないため、動画の数は少なく、どのようなプレーをする選手なのかは良く分からなかった。しかし、吹田スタジアムのピッチに投入された三竿健斗の表情からは、絶対に守り切るぞという、まさに鹿島の選手といった強い意志が伝わってくる。早く終われ、と電光掲示板に表示される時間を確認する。

38分、相手選手の暴力行為によって数的優位に立った。リードを奪った後も決定機を作り出していたが、より一層と勝利が近づく。その後もチャンスを作り続け、66分には上田綺世が自身2点目を決めた。相手の戦意を喪失させるような、大きな価値を持つ得点だ。関川郁万の負傷によって後半開始から投入された三竿健斗も、慣れないセンターバックで抜群のパフォーマンスを披露する。近年、鹿島アントラーズのキャプテンとしてチームを引っ張ってくれていたが、その座を降り、重圧を共に背負ってくれる選手の帰還により、久しぶりに三竿健斗という選手の本来のプレーを観ることが出来た気もする。

試合終了。鹿島アントラーズがJ1リーグの開幕戦、吹田スタジアムでガンバ大阪を下した。スタジアムにオブラディオブラダのリズムが響く。長いシーズン、これから様々な困難が待っているだろうが、この選手たちとなら乗り越えられると信じさせてくれる試合だった。