Momosaka

小笠原満男へ

小笠原満男へ
「えっ、どういう意味ですか」
「はい?意味が分からないんですけど」
「小笠原選手 現役引退のお知らせ」というリリースをみて、過去に小笠原満男が発した言葉が頭に浮かんでくる。あのときは中学生ながら、「決勝も国立でやるから、また国立に帰ってきてほしい。って意味だよ」と必死にテレビの向こう側に訴えていたが、今では当時の小笠原の気持ちが良く分かる。意味が分からない。
鹿島を好きになったころ、小笠原はすでに鹿島のレギュラーでした。確か、初めて鹿島の試合をスタジアムで観戦したのは2000年、国立競技場で開催されたヴェルディ川崎戦。試合が始まる前に17番のシャツを買い、ゴール裏で応援しました。結果は本山の2ゴールで鹿島の勝利。小学生だった私は、本山のシャツを買えば良かったと試合後に少し後悔した気がします。
初めてのサッカー観戦以来、私は鹿島アントラーズに夢中になりました。所属していた少年サッカー団の練習では必ず小笠原のシャツを着て、地上波やBSで放送された鹿島アントラーズの試合は必ず録画して何回も繰り返して見ました。翌年には「今年の家族旅行はどこに行こう会議」でカシマスタジアムで観戦ツアーをプレゼンし、初めての鹿嶋行きの権利を勝ち取りました。
その旅行でも忘れられない思い出があります。試合前日の練習をクラブハウスで見学した私はサインをもらうため、選手たちが出てくるのを待っていました。お目当ての小笠原からはサインが貰えなかった苦い思い出もあるのですが、車に乗り込む小笠原に「頑張ってください」と叫んだら、「君も頑張れよ」と言ってもらえた、ような気がしたのを覚えています。都合の良い幻聴だったかもしれませんが、小笠原満男の口元が動いていた覚えもあります。
その後、潮来観光で船に乗ったのですが、その船を漕いでくれた方に、私の着ているシャツにプリントされている文字を見てから「小笠原くんは小学生?」と質問された衝撃が強すぎて、「君も頑張れよ」事件は鮮明に覚えていないのですが、きっと言ってくれたと信じ、それからの人生で辛いとこがあったときはその言葉を思い出して生きてきました。
そんな、私にとってヒーローの引退。引退を知ってしばらくの間、冒頭の通り意味が分からない状態だったのですが、何回も何回も「鹿島アントラーズ」と繰り返す小笠原のコメントを読み、何故か初めて実感できてしまいました。鹿島を栄冠に導いたプレーも当然ですが、ウォーミングアップエリアで水道に足をかける姿や、クラブハウスでクーラ―ボックスに座る姿、ゴールを決めた選手に駆け寄って指示を出す姿を見ることはもう出来ない、と。
多分この悲しみは肉を食べても治らない。それでも、いつまでも落ち込んでいたら、ボールを持ちすぎるブラジル人のようにビンタを喰らってしまいそうだから、いままで通りに小笠原からもらった言葉を励みに自分の人生を頑張ってみようと思います。最後に、今まで本当にありがとう。小学生の時に買った140cmのシャツは、僕の身長が180cmになった今でも宝物です。