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[vs鳥栖レビュー]架空観戦日記「それを杞憂やら言われても」

名前:桐谷 佳衣子
年齢:27歳
職業:役者
自宅:杉並区

好きな漫画が大変なことになり、スターバックスにコーヒーフラペチーノを買いにいった帰り道、サガン鳥栖戦のキックオフまで既に2時間を切っていることに気が付き、スターティングメンバーを確認する。メンバー表の一番上にスンテでもソガでもない名前があった。ついにこの時が来たのね、と一気に感情が高ぶる。

初めて沖悠哉の名前を見たのは2014年、沖が所属していた鹿島アントラーズジュニアユースが全日本クラブユース選手権を制した際の記事だった、はず。その大会でMVPとなった沖悠哉はメディアにも取り上げられていた。原理主義さんのブログにそのニュースが残っていないかと、その場で確認すると、2014年8月25日の記事がヒットしてくれた。『J論』に掲載された記事で、書いていたのは当然のように川端暁彦さんだった。

その記事でも触れられているけど、沖悠哉の憧れは曽ヶ端準であり、J1リーグデビュー戦はその曽ヶ端準がベンチから見守ることになる。今季は出場の予感があった。新監督が目指すサッカーはゴールキーパーにも足元の技術が求められるはずで、それはまさに沖悠哉のストロングポイントである。実際、今年の2月に開催された水戸ホーリーホックのプレシーズンマッチではビルドアップの面では、そりゃもう圧倒的なパフォーマンスを見せつけてくれた。もう開幕戦から起用してもいいのでは、と思ったほどだった。

それから少し時間はかかったが、ついに公式戦デビューを果たすときが来た。不安や心配がないといえばウソになる。フィールドプレイヤーとは違い、ひとつのミスが失点に直結してしまうポジションだ。せめてスタジアムに行き、その名前を叫びたかったが、それも許されない状況である。悲しく、不安で、心配になる。一度、気持ちを落ち着かせようと、馬橋公園のベンチでコーヒーフラペチーノを飲むことにした。

ギリシャ神話に登場する人魚がほほ笑む紙袋からカップを取り出すと、そのカップに店員さんが「Fight」と書いてくれていた。私は手書きのメッセージに少し喜びながらも、その言葉は沖に送ってあげてほしい、と思う。続けて、もし今日、大量失点で負けたら、と考えてしまう。もしも今日、キーパーのミスで負けたら。考えるだけで、苦しくなる。ソガとスンテはベテランであり、山田くんも逸材であることは疑ってないが、高卒1年目。まだ公式戦で起用できるレベルではないはずだ。世代交代が必要なのに、今日の試合で負けてしまったら、どうすればいいのだろう。

「Fight」と書かれたカップに緑色のストローを差し込み、コーヒーフラペチーノを吸い込む。それと同時に、どこからか「勝手に壁作ってつまんない悩み方してんなよ」なんて声が聞こえてくる。周りを見渡すが、人がいる気配はない。再びストローに口をつける。今度は何も聞こえないが、先ほどの言葉を思い出し、「…うん」と答える。せっかくだから楽しまないと。これから応援するのは、ひとつのキックで嫌な流れを変えたり、良い勢いをさらに加速させることが出来る選手だ。試合が終わった後はきっと「新星の発見」の文字が紙面を踊るだろう。もう不安に思い、心配し、悩むのは終わりにしよう。ゴールキーパーの世代交代なんて、これから先、いくらでも訪れる。「どうせ私たちはしわしわのおばあちゃんになっても鹿島サポーターだから」なんて声がどこからか聞こえてくる。