Momosaka

[vs神戸レビュー]カシマの鹿島 ~a lucky boy~

山田大樹

今週もアカデミー出身のゴールキーパーがJ1リーグデビューを果たした。山田大樹。今季の高卒組は高校サッカーで知名度を高めた選手や名門高校の10番ということもあり、山田大樹も世代別日本代表の常連でありながら、かつての曽ヶ端準と同じように「染野、松村、荒木ら」の「ら」であった。そのようなニュースを見るたび、早く山田大樹の凄さを知ってほしいと思っていたが、こんなにも早くその機会が訪れるとは思っていなかった。

公式戦のデビューはその3日前、ルヴァンカップの消化試合だった。その試合では2失点を喫するも、至近距離からのシュートを弾き出し、ビルドアップにも積極的に参加するなど素晴らしいパフォーマンスを披露する。先週のリーグ戦でデビューを果たした沖悠哉と同じように、クォンスンテや曽ヶ端準からポジションを奪うことが出来るポテンシャルがあることを証明してみせた。

そして沖悠哉の体調不良もあり、リーグ戦でもデビューを果たす。この試合ではセットプレーの処理を誤って先制点を許してしまったが、ミスなく成長する選手なんてこの世に存在しない。この失点を活かし、これから成長しまくってくれれば問題ない。後半も重心の逆を突かれ、勝ち越しゴールを許してしまったが、この失点を活かし、これから成長しまくってくれれば問題ない。失点シーン以外では、よく声を出し、よく守ってくれた。試合は1点差のまま、最終局面に突入する。

松村優太

1点のビハインドを負って迎えた82分、J1リーグデビューを果たす。松村優太。高校サッカーを制して鹿島アントラーズに加入した松村はルヴァンカップの開幕戦でデビューを果たしたが、退場。それでも、先日のルヴァンカップ清水戦ではプロ初ゴールを決めた。ルヴァンカップは残念ながら敗退となったため、ニューヒーロー賞の受賞は叶わないが、ルヴァンカップでの活躍を経て、鹿島アントラーズのに新しいヒーローになればいい。

その松村の投入で鹿島はさらに勢いを増す。染野唯月やエヴェラウドが次々と惜しいシュートを放つ。松村自身も86分にカウンターから持ち前の推進力を活かし、相手陣内深い位置までドリブルで持ち運ぶシーンがあった。結果的にゴールには繋がらなかったが、サポーターが声を出せる状態だったらとんでもない大歓声で、もっともっと速くなっていたはずだ。いつかスタジアムで、松村を加速させることが出来る日を楽しみにしている。

そして、後半ATにもチャンスが訪れた。ペナルティエリア付近でアラーノからの縦パスを収め、前を向く。ゴール前への侵入は阻止されたが、十分に相手選手を引き付けた。その後方でフリーになったアラーノがミドルシュートを放つ。しかし、相手のブロックに遭う。カウンターだ。神戸の選手が前線に抜け出す。しかし、相手はキープではなくゴールを選択した。ラッキーだ。関川郁万がボールを奪い、素早く前線にパスを供給する。

染野唯月

関川郁万が奪ったボールが永木亮太、ファンアラーノを経由して再び永木亮太に繋がり、右サイドからゴール前にクロスボールが蹴りこまれる。一度は相手守備陣に阻まれるが、セカンドボールを荒木遼太郎が拾うと、そのボールを引き取ったアラーノの視界では染野唯月がパスを要求しており、ペナルティエリア内にポジションを取っていた染野唯月にパスが繋がる。

高校サッカーの尚志高校対青森山田高校の試合をテレビで観戦し、なんでこんな凄い選手をユースに上げなかったのか、と無責任に少しだけ怒った日から582日が経った2020年8月16日、染野唯月は多くのクラブから獲得を打診されながらも鹿島アントラーズに帰ってきてくれて、早くもトップチームの選手として活躍している。J1リーグデビュー戦となった川崎戦ではシュートがクロスバーを叩くなど、未だリーグ戦でのゴールはないが、3日前のルヴァンカップではプロ初得点を決め、神戸戦で後半ATに絶好のチャンスが巡ってきた。やはり、持っている。プロ初ゴールは劇的な同点ゴールだ。早く決めて、早くボールを拾って、早く逆転ゴールを決めてくれ、と願う。

後方からのパスを受けた染野唯月はワンタッチで反転し、余裕をもってゴールと向かい合う。対面する相手選手はハンドリングに注意し、ファーサイドへのシュートを警戒しながらも、両腕を背中に隠した。ゴール前にポジションを取っていた2人のディフェンダーもシュートを警戒している、ように見える。ルックアップし、ゴール前を確認した染野は改めて右足でボールをセットすると、緩やかなボールをコロコロとゴール前に送り込む。相手守備陣の足が止まった。数秒後、染野唯月はネットに突き刺さったボールを回収するために走り出す。

荒木遼太郎

試合はそのまま同点で終了。逆転勝利とは行かなかった。悔しくて仕方ない。勝ち以外はまったく喜べない。しかし、公式記録は引き分けで、勝ち点1を獲得した。山田大樹のデビュー戦で負けなかったことも大きな意味を持つかもしれない。ホームのカシマサッカースタジアムで負けなかったことも大きい。そして、収穫もあり、その筆頭が荒木遼太郎のパフォーマンスだ。最近の試合では荒木遼太郎がピッチに立てば何かが起きると、勝手に絶大な信頼を置いている。そんな風に思える選手は同じ東福岡高校出身の本山雅志以来かも知れない。

その東福岡高校で行われた鹿島アントラーズへの内定決定の記者会見での「鹿島に入ることを目指していたので、今回話を頂いて、僕は鹿島に行くことしか考えていなかったです」というコメントを聞いたとき、このコメント以上にサポーターを惹きつけるパフォーマンスを披露するのは難しいのではないと心配になったが、今では試合を観るたび大好きを更新していっている。

神戸戦の結果により、首位とのポイント差が17に広がった。悔しくて仕方ない。悔しくて仕方ない、けど、カシマで鹿島のミライたちが披露したパフォーマンスは輝かしい未来を予感させるものだった。